外は大雨でも、晴れやかな表情だった。練習相手は大塚ブルペン捕手のみ。2人きりの空間で、田中幸は約2時間、キャッチボールやノックなどで精力的に汗を流した。「人がいない方が自由に、やりたいことができるから」最後には約150スイングのロングティーも敢行した。
キャンプ地に持ち込む予定だった約300万円の高圧酸素治療器(通称ベッカムカプセル)も、結局は都内の自宅に残してきた。「梱包したりするのが面倒だったからね」と理由を説明したが、秘密兵器に頼らないことこそ、心身の充実を表している。
現在、同じ名護で自主トレを続ける横浜・工藤にならい「『ハマのおじさん』に対抗して『ハムのおじさん』になろうかな」と笑い飛ばす一方で「まだ若手に負けるつもりはない」と力を込めた。小笠原の巨人移籍に伴い、出場機会の増加が予想される。「あと18本まで来ると気は楽だけど、まずはキャンプでアピールして、試合に使ってもらわないとね」故障を恐れずにプレーし、定位置奪取に意欲を見せた。今年こそ、夢の大台に到達する。

自主トレ本格化 田中幸ブルペン入り希望
前日の20日に名護自主トレ一番乗りを果たした大ベテラン田中幸が、今度は投手転向!? 「右ひじを手術してから10年。最近は調子がいいので、ここらでもう一度しっかりとしたボールを投げるためにも自主トレではブルペンに入ろうかと考えています」。日本ハムでは稲葉が、キャンプ中にブルペンに入り、球の回転や下半身強化を目的としてピッチング練習をする。
あくまでも練習の一環としてのものではあるが、もともとが鉄砲肩は鳴り響いていた田中幸。今年12月には不惑の年齢に到達するが、まだまだ衰えを知らないようだ。この日はあいにく断続的に雨が降りしきり、室内でのトレーニングとなったが、キャッチボールの球筋は見事な回転と力強さを見せつけていた。
そして本職のバットは徹底していた。大塚ブルペン捕手が投げるソフトボールのようなトスを次々と右に打ち返した。「打撃の基本は外側の球を、いかにとらえ力強く打ち返せるか」だと田中幸は言う。さらに下半身をしっかりと使えることによって、内側も変化球にも対応できるのだ。
気持ちのいい打球がネットを突き刺した。田中幸も「僕も気持ちいいです」と、これ以上ない笑顔。しかしすぐさま、バットを構え直す。打つこと150球。初日はバットを持たなかった田中幸が、07年沖縄での初打ちは、本人も納得の時間となって過ぎていった。
打って、投げて、そして守って。今の田中幸の頭にはベンチウオーマーに甘んじる考えはみじんもない。一塁を、三塁を勝ち取る、外野だって奪い取る。気持ちの充実は、しきりに流れる汗に表れていた。

日本ハム田中幸雄内野手(39)が6日、順調に第2クールのスタートを切った。キャンプイン以来、晴天続きで温暖な気候が続いており、この日は25度(球団発表)とスタンドのファンも汗ばむほどの陽気。ベテランながらフルメニューを消化しており「体は昨年よりも動いている」と万全の調整ぶり。各球団のベテランも精力的に動いているが「自分は自分ですから」とマイペースで仕上げていくつもりだ。